「腰が痛いのに、どうして手に鍼を刺すんですか?」
当院で初めて施術を受ける方から、一番よく聞かれる質問です。痛いのは腰なのに、手首のあたりに鍼が来たら「先生、場所を間違えていませんか?」と言いたくなりますよね。大丈夫です、間違えていません。
これは「董氏楊氏奇穴(とうしようしきけつ)」という鍼の方法です。名前は難しそうですが、考え方はとてもシンプルです。このページでは、どんな鍼なのかを、できるだけやさしくお話しします。
このページのまとめ
- 董氏楊氏奇穴は、痛い場所に基本的に直接刺さず、手や足のツボで体を整える鍼です
- 腕と脚は作りが似ていて、似ている場所どうしがつながっていると考えます
- 痛い場所に鍼がないので、刺したまま体を動かして、その場で変化を確かめられます
- 台湾の鍼の名人と、その弟子が伝えてきた方法です
董氏楊氏奇穴とは?
董氏楊氏奇穴は、痛い場所には基本的に直接刺さずに、手や足(ひじから先、ひざから先)のツボを使って体を整える鍼です。
たとえば、腰が痛いときに手のツボを使う。右の肩が痛いときに、左の足のツボを使う。こんなふうに、痛い場所から離れたところに鍼をします。
「奇穴(きけつ)」は、ひとことで言うと「その流派に伝わってきた特別なツボ」のことです。とはいえ、まったく新しい不思議なツボというわけではありません。多くは昔からよく知られているツボのすぐ近くにあって、そのツボの働きも受け継いでいます。昔ながらの鍼の延長にある方法です。
日本では、扱う鍼灸師はまだ多くありません。台湾で広まり、今はアメリカやヨーロッパ、韓国などでも鍼灸師向けの講座が開かれている鍼です。
なぜ手のツボで腰が楽になるの?3つのポイント
答えは、「体は、離れた場所どうしがつながっている」と考えるからです。
イメージとしては、道路の渋滞に近いです。混んでいる交差点にさらに車を入れるより、少し離れた信号を調整したほうが、流れが良くなることがありますよね。痛い場所そのものではなく、つながっている離れた場所から流れを整える。それが、この鍼の考え方です。
ここからは、そのしくみを3つのポイントでお話しします。
ポイント1:腕と脚は「似た作り」になっている
自分の腕と脚を見比べてみてください。
- 肩と、脚のつけ根
- ひじと、ひざ
- 手首と、足首
- 手と、足
関節の並びがそっくりですよね。董氏楊氏奇穴では、この「似ている場所どうし」がつながっていると考えます。だから、ひざが痛いときにはひじのあたりのツボを、足首が痛いときには手首のあたりのツボを使うことがあります。
たとえば、手にある「小節(しょうせつ)」というツボは、足首のねんざや痛みに使われることで知られています。
ポイント2:痛い側の「反対側」から整える
右の腰が痛いときは、左の手。左の肩が痛いときは、右の足。体の右と左、上と下はつながっていると考えて、反対側から全体のバランスを整えていくのが基本です。
たとえば、右側の坐骨神経痛のときは、左手の親指と人差し指の間のあたりにあるツボを使うことがあります。当院でもよく使う代表的なツボです。(ツボの名前は覚えなくて大丈夫です)
反対側から整えるので、痛い場所に触れずにすみます。ぎっくり腰のように「痛いところを触られるのもつらい」ときでも、受けていただきやすい方法です。
ポイント3:刺したまま動いて、その場で確かめる
痛い場所に鍼がないことの一番のメリットは、鍼を刺したまま、痛いところを動かせることです。
施術の前に、まず「どう動かすと痛いですか?」とお聞きします。そして手や足に鍼をしたまま、同じ動きをしてもらいます。
- 腰なら、歩いてみる、前にかがんでみる
- 肩なら、腕を回してみる、ひじを曲げてみる
- 首なら、倒してみる、回してみる
痛いところに鍼が刺さっていたら、こうして動かすことはできませんよね。動いてもらいながら変化を一緒に確かめて、変化が少ないときはツボを変えて、また確かめます。
たとえば、ぎっくり腰で歩くのもままならない状態で来られた方が、鍼をしたあとに歩いてもらうと、スタスタ歩けるようになることがあります。そんなとき、ほとんどの方がまず「えっ」と驚かれます。一番多い一言は「え、なんで?」。次に「あれ、痛くないな」。そして「なんでここに打つと良くなるんですか?」「ここは神経なんですか、ツボなんですか?」と質問が続きます。このページは、その答えでもあります。
鍼そのものには、体の中でどんな働きがあるの?
ここまでは、董氏楊氏奇穴の考え方をお話ししました。ここでは手や足のツボに限らず、「鍼を刺すと体の中で何が起きているのか」を、研究で報告されていることをもとに簡単にご紹介します。
- 血の巡り(血流の増加):鍼を刺したまわりでは、血管が広がり、血の流れが増えることが報告されています。私は、この「全身の血の巡りを促すこと」をいちばん大切に考えています。
- 痛みをやわらげる働き(鎮痛):鍼の刺激で、体がもともと持っている、痛みをやわらげる物質(エンドルフィンなど)が出ることが分かっています。
- 炎症を落ち着かせる働き(抗炎症):体の中の炎症にかかわる物質に、鍼が影響するという研究があります(主に動物の研究です)。
- 神経の働きを整える(神経の調整):自律神経(体を休ませたり、活動させたりする神経)のバランスに影響する、という報告もあります。
これらは鍼全般について研究で報告されていることで、まだ分かっていないことも多くあります。感じ方や変化には個人差があります。当院では、その日の体の状態を一緒に確かめながら施術を進めます。
刺す本数が少なく、服を着たまま受けられます
たくさん刺すより、少ない本数でしっかりツボを選ぶことを大切にしています。
手や足に刺すことが多いので、服を着たまま受けていただけます。鍼が初めての方にとっては、「何十本も刺されるわけではない」「服を脱がなくていい」と分かるだけでも、少し安心できるのではないでしょうか。
どこから来た鍼?
台湾で活躍した鍼の名人と、その弟子が伝えてきた鍼です。
董景昌(とう・けいしょう)先生は、中国・山東省の、代々鍼を伝える家に生まれました。若いころは軍に身を置き、兵士たちを鍼で診ていたといわれています。1949年に台湾へ渡ってからは、生活に困っている人を無料で診るなど、町の鍼の先生として多くの人を支えました。
ただ、董先生は「なぜ効くのか」をほとんど説明しない人でした。弟子には「自分で見て、自分で考えなさい」と言っていたそうです。
その教えを受けた弟子の一人が、楊維傑(よう・いけつ)先生です。楊先生は、董先生の施術を近くで見ながら古い医学書を読み込み、「なぜ効くのか」を誰にでも分かる理屈にまとめました。そして1975年に本にして発表し、その後アメリカをはじめ、海外にも紹介していきました。
鍼を生み出し伝えた董先生と、それを理論として受け継ぎ発展させた楊先生。日本では、このお二人に敬意を表して、お二人の名前を合わせた「董氏楊氏奇穴」という呼び方をしています。
私が董氏楊氏奇穴を学んだきっかけ
私の祖父は、鍼灸師で薬剤師でもありました。そんな祖父の影響もあって、鍼そのものはもともと好きでした。ただ、それまでの私は整体を習う機会のほうが多く、鍼については、ほとんど独学で勉強してきた時期でした。
約11年前、アメリカで鍼と漢方の第一線に立ち、董氏楊氏奇穴を長年学ばれてきた先生が、日本に帰国した際に勉強会を開いてくださいました(今の「董氏楊氏奇穴勉強会」です)。その会場がたまたま札幌でした。「鍼をきちんと学べる、せっかくの機会だ」と思って参加したのが、私と董氏楊氏奇穴との出会いです。
勉強会で考え方を聞いたときは、「おお、これはすごい!」と衝撃を受けました。そして実際に使ってみると、さらに驚きました。最初のうちは家族や身内に練習で打たせてもらっていたのですが、そのたびに「わあ、こんなに変わるんだ」と、効果の出方の速さにびっくりしたのです。
……正直に白状すると、この頃の私は「もしかして自分は天才なのでは」と、すっかり天狗になっていました。ところが、あとで改めて勉強し直すたびに、自分の勉強不足と理解不足を思い知らされることになります。あの頃は「分かった気になっていただけ」だったんですよね。今になってようやく、「ああ、こういう意味だったのか」と、少しずつ深いところが分かるようになってきたと感じています。
それまでの鍼と一番違うと感じたのは、痛い場所に刺さなくても良くなることです。あまり大きな声では言いたくないのですが、痛い場所に直接刺したり強く揉んだりすると、かえって悪化させてしまうこともあります。これは鍼でも整体でも同じです。痛い場所に触れずに整えられるので、その心配がありません。
それまでは「鍼はすぐに効くものではない」と思っていた時期もありました。でも今は、正しい場所に打てていて、骨折などで体の作りそのものが壊れていなければ、鍼はきちんと体に働きかけてくれると考えています。
あれから11年、今も勉強会に通い続けています。2025年の秋には、アメリカで董氏楊氏奇穴を教えているスーザン・ジョンソン先生を日本にお招きした講演会に、ボランティアスタッフとして参加させていただきました。それでも、周りの先生方に比べると、私はまだまだ学ぶことばかりです。
👉 参考記事: 苫小牧で開催!「董氏楊氏奇穴」応用編の勉強会で学んだこと
どんなお悩みに使うの?
当院に来られる方のお悩みで多いのは、次のようなものです。
- 坐骨神経痛(お尻から脚にかけての痛み・しびれ)
- ぎっくり腰、長引く腰痛
- 肩こり、首のこわばり、頭痛
- 手足のしびれ
痛みのお悩みは、施術中に変化が分かりやすいことが多いです。
また、胃腸の不調など体の内側の不調にも使える方法なので、「これも鍼で大丈夫なんですか?」と驚かれることもよくあります。こうした不調は、痛みのようにその場ですぐ変わるものではないので、何回か続けて様子を見ていきます。
👉 参考記事: 坐骨神経痛の痛みでお悩みの方へ|お尻から足のしびれ・痛みの原因と「痛む所に直接刺さない鍼」
👉 参考記事: デスクワークの限界腰痛…マッサージで戻る理由と「痛む所に直接刺さない鍼」
病院をおすすめするのは、こんなとき
鍼で変化がまったく出ないときは、病院での検査をおすすめしています。
痛みのお悩みは、正しい場所に鍼ができていれば、たいていその場で何かしらの変化が出ます。だからこそ、ふつうの腰痛だと思って来られた方に、鍼をして動いてもらっても痛みがまったく変わらないときは、「何か別の原因があるかもしれない」と考えます。めったにないことですが、検査で思いがけない病気が見つかることもあるからです。その場合も、検査と並行して鍼を続けるのはかまいません。
また、帯状疱疹のように、病院のお薬のほうが早く良くなるものは、迷わず病院をおすすめします。
当院には、薬剤師さんやお医者さん、看護師さんも患者さんとして通ってくださっています。病院か鍼か、どちらか一つを選ぶ必要はありません。両方を上手に使って大丈夫です。一番大切なのは、あなたが早く良くなることです。
よくある質問(FAQ)
Q. 董氏楊氏奇穴は、ふつうの鍼と何が違うのですか?
A. 一番の違いは、痛い場所に基本的に直接刺さず、手や足のツボを使うことです。痛い場所に鍼がないので、刺したまま体を動かして、その場で変化を確かめながら進められます。
Q. 手に刺しているのは、神経ですか?ツボですか?
A. ツボです。董氏楊氏奇穴に伝わるツボで、多くは昔から知られているツボのすぐ近くにあります。腕と脚、右と左のように、体の離れた場所どうしのつながりを使って、痛い場所に働きかけます。
Q. 刺したまま体を動かしても大丈夫なのですか?
A. 鍼は手や足に刺していて、痛い場所には刺していないので、腰や肩をゆっくり動かしていただけます。無理のない範囲で、私が声をかけながら一緒に確かめていきます。
Q. 鍼が初めてで不安です。痛くないですか?
A. 刺すときのチクッとした感じは少ないですが、ツボに届くと「ズーン」と重く響く感じが出ることがあります。これは鍼がツボに届いたサインのひとつです。手や足に刺すことが多いので、服を着たまま受けていただけます。
Q. 何回くらい通えばよいですか?
A. 痛みのお悩みは、初回から変化を感じる方が多いです。ただ、痛みが長く続いている場合や体の内側の不調は、何回か続けて様子を見ていきます。お体の状態を見ながら、通う間隔をご提案します。
👉 参考記事: 鍼がズーンと痛いのは悪い証拠?鍼灸師が教える「響き」の正体
はじめて当院をご利用になる方は、初めての方へのページもご覧ください。ご予約は24時間WEB予約から承っています。
ご予約やお問い合わせはこちらから
※施術内容や詳しい料金プランは 【鍼灸コース・料金メニュー】 をご確認ください。
【初めてご予約される方へ】
初めての方は、ご来院の流れや雰囲気がわかる 【初めての方へ】 ページも併せてご確認ください。
当院は院長の米森が、初回の施術から痛みの改善、そしてその後の「再発を防ぐためのメンテナンス」まで、責任を持ってすべて担当いたします。行くたびに担当者が変わるようなことはありませんので、安心してお任せください。
📱 WEBからのご予約(一番スムーズです!)
WEB予約は【ご来院の4時間前まで】受け付けております。直近の日時は埋まりやすくなっておりますので、まずは24時間リアルタイムで空き状況がわかるWEB予約をご利用ください。
⚠️ ご予約の前に必ずご確認ください
ご予約の変更・キャンセルは【前日の営業時間内】までにお願いいたします。 当日キャンセル・無断キャンセルの場合は、規定のキャンセル料(5,000円)をご請求させていただきます。あらかじめご了承の上、以下のボタンよりご予約にお進みください。
📞 当日のご予約・ご相談について
「ぎっくり腰で今日すぐ診てほしい!」など、当日のご案内をご希望の方はお電話にてご相談ください。
⚠️【重要なお願い】
院長がマンツーマンで施術に入っているため、電話に出られないことが多くあります。 その場合は切らずに、必ず留守番電話に「お名前とご連絡」をメッセージに残してください。手が空き次第こちらからすぐに折り返しご連絡いたします!

どんな人が治療するの?
【 札幌駅で鍼(はり)なら 】
札幌クラーク治療院
📞011-788-5880
営業時間:12:00~20:00 / 定休日:水曜日
※なるべくお待たせしないため、完全予約制とさせて頂いております。